MSPのサウンドの特徴は、ナチュラルでクリアだということに尽きます。音域も、よい取り付け位置さえ見つかれば、低音から高音までじゅうぶん幅広いようです。
正直に申し上げると、私はピエゾのピックアップについて悪い印象しか持っておりませんでした。あまりにも生音とアンプの音色が違いすぎるからです。ところがMSPは生音に近い音色を拾ってくれます。
従来のピエゾのピックアップの大半はブリッジ(駒)に取り付けるものでした。駒の音色というものはかなりえぐみがあり、私たちが普段聞く生音に近いのはむしろ表板の振動なのではないかと考えます。
MSPの音が自然なのはブリッジではなく表板に取り付けるからだと思います。もちろん、MSPがより広い音色を拾うように素材にも試行錯誤をしたという話も伺っていて、実際に自分の耳でその違いを実感しています。高いレンジのオーバートーン(倍音、上音)がすごく伸びるようになり、コントラバス本来の音色に近づいたように思います。
従来のピックアップでは、アンプの音量を上げてしまうと音色の違和感が増して、つい音量を絞り気味でしたが、MSPではアンプから再生される音があまりにも自然なので、ときに、必要以上にアンプの音量を上げてしまうほどです。メンバーやお客さんが、アンプを使っていたことに気づかないことさえあります。
唯一の悩みの種は、取り付け位置が数ミリ変わるだけで、音色がガラッと変わってしまうことです。でも、楽器の響きは、会場の音場の特性や、その日の気象条件で変わりますから、最近ではMSPの日々の位置の違いを楽しむようにしました。
※動画2分40秒~に吉岡さんのコメントがあります。*動画:2013年2月撮影、コメント:2016年3月にいただきました*